忘れられた恋の物語

「そうだ。お名前は?」


思い出したように澪さんが俺に聞いた。


「芦名です。芦名斗亜といいます。」

「芦名さん。ありがとうございます。時間が経っても優輝に会いに来てくれて。」

「いえ。来たかったんです俺が。」


切なそうに笑った澪さんは視線をお墓の方に移した。


「今日は優輝に報告したいことがあるんだ。」


飛田さんが俺の隣から澪さんの顔が見える位置に移動し、その場に座り込んだ。


「私、付き合ってる人がいる。」

「…報告って聞いてそうかなと思った。よかったな。」


優しい笑顔を浮かべる飛田さんはぽつりとそう呟いた。


「…その人は私の中の一番はあんたから絶対に変わらないってわかってるの。それでも私が好きなんだって。変わってる人だよね。」