忘れられた恋の物語

目の前に澪さんがいるのに。飛田さんは澪さんに会いたくてたまらないはずなのに。

なぜためらうんだろう。そう思った。


「それなら俺と一緒に行きましょう。」

「えっ…!待ってくださ…!」


焦って俺を呼ぶ飛田さんの制止を聞かず、澪さんの方へと足を進める。頭の中では澪さんに何か聞かれたらどう答えようか、ずっと考え続けていた。

お墓の前に到着すると、飛田さんはおそるおそるといった様子で俺の横に立った。


「優輝のお墓参りですか?」


こちらを向いた澪さんは凛とした声で俺に聞いた。

長い黒髪に大きな目をした、はっきりとした顔立ちの綺麗な人だった。


「はい。」

「初めてお会いしましたよね。優輝がいなくなってからもう7年は経つのに。」

「そうですね。」