忘れられた恋の物語

次の日、飛田さんに案内してもらいながら着いたお墓には先客がいた。

遠くから後ろ姿が見えただけなのに、横で飛田さんが呟いた。


「澪だ…。」


ゆっくりと近付いていくと、澪さんがお墓の前に立ったまま何かを話しているのが聞こえた。

その瞬間、飛田さんが背を向けてどこかに行ってしまおうとした。


「飛田さんダメです。行かないで。」

「いえ、やはり私と澪は会わない方が…。」

「澪さんは飛田さんに話してるんですよ。聞いた方がいいです。」

「でも…。」


飛田さんは少し考えていたけれど首を振った。


「無理です。澪の話を聞く勇気が私にはありません。それに澪からは私が見えないとはいえ、彼女にまた近付く資格が私にはありません。」