私は何も考えず、思わず走り出した。


「走っちゃダメ!」


焦ったようにそう言いながら斗亜がもっと速く私に向かって走ってくる。

そのまま勢いに任せて斗亜に抱きついた。


「…!」


斗亜が息を飲んだのがわかった。

私が急に抱きついたからびっくりしたのだろうと思った。でも、もう会えないと思っていた彼に会えた嬉しさで私はもっと腕に力を込めた。

すると斗亜がおそるおそる私の髪を撫でた。


「柚茉。走ったらダメだよ。心臓に負担がかかる。」


いつもの斗亜だ。

私を心配して小言ばかり言う斗亜。

斗亜は最後に会った時のことがなかったかのような、いつもの優しい口調で続けた。


「あんな勢いで抱きついて痛くなかった?」

「大丈夫。」