「ごめん澪。1人にして。」


『まだ優輝のふりをするのか』と言っているような視線を向けられたけれど、最後にどうしても言いたいことがあった。


「すぐに澪の記憶からは消されるだろうから…。自分勝手だけど言わせてほしい。」

「これ以上何を?」

「愛してる。」


澪の表情が少し和らいだ気がした。不意を突かれて驚いただけかもしれないけれど。

彼女は何も言わなかったけれど、思いを伝えられた俺自信は心残りがなくなったように感じた。


「じゃあ。」


それだけ言った澪は俺に背を向けて、一度も振り返らずに去っていった。

澪の後ろ姿が見えなくなったその瞬間。

俺は現世に戻ってくる前にいた、あの何もない空間に立っていた。

自分の正体を澪に言ってしまった俺は、そうして何日か早く現世で過ごせる日々を終えたのだった。