忘れられた恋の物語

その時、ベッドの横に飛田さんが現れた。


「1か月でこんなに人の気持ちが動くとは思いませんでしたか?」


俺はベッドから起き上がって答えた。


「はい…。柚茉が俺を好きになってくれるなんて想像すらしませんでした。彼女が死のうとしてたわけじゃないこともわかりましたし、もう俺の心残りは解消されたはずなのに…。欲が出ました。」


飛田さんは何も言わず頷いた。


「好きになってもらえて…本当に嬉しいと正直思ってしまいました。すぐにいなくなる分際で。」

「人間というのは死んでも欲が出るものです。」


静かにそう言った飛田さんは、ベッドの端に腰かけた。表情は見えないけれど背中がいつもより悲しげに見える気がした。


「前にも言いましたがこれはあなたのための時間です。芦名さんが悩む理由もわかりますが、自分に正直になって残りの時間を過ごしてほしいです。」