忘れられた恋の物語

柚茉が悲しそうな表情をして必死に強がる姿を見て、自分の気持ちを話すべきだと思った。

いや、それは言い訳だ。

初恋の人に好きだと言ってもらえて、自分の気持ちに蓋をすることが出来なくなったのだ。あの瞬間、自分の欲が出た。

それなのに自分の言いたいことだけ言って、柚茉を突き放した俺は卑怯な奴だ。

柚茉が言っていた。

『今も連絡先は知らないし、このまま斗亜がいなくなった後は忘れることにする』と。

柚茉を家まで送った後、部屋に戻ってきた俺はベッドに寝転び今日のことばかりを考えていた。

俺がいなくなったら柚茉の記憶から自分が消されるのはわかっていたけれど、そんなことしなくても彼女はすぐに俺を忘れるかもしれないと思った。

その考えが嬉しくも悲しくもあった。