「違いますよ。ここが私の定位置なんです。」


彼は全く信じていない顔をして、私に向かって手を差し出した。


「こっち来て。」


これは1度戻らないと信じてもらえないと思い、私は柵の内側に戻った。

それを見た彼が一瞬、顔を歪めた。


「…柵を越える動作が慣れてますね。俺の手も借りないで。もしかして何度もこういうことを?」

「さっき定位置だって言ったじゃないですか。」

「…"定位置"って。危ないだろ!」


急に彼の言い方が強くなったことにびっくりして、私は目を丸くした。

彼も自分が大きな声を出したことに驚いているようだった。