忘れられた恋の物語

「私こそ。初めて会った日からずっと斗亜に自分勝手なことしてるよね。困らせてばっかりでごめんね。」


たった1か月だったのに、その間友達ですらいられなかった。

彼があまりにも素敵な人だったから。そんな彼のことを私が好きになってしまったから。


「柚茉が自分のことを自分勝手だと思うなら、俺の願い通りにしてくれてる証拠だよ。自由に思うままに出来てるってこと。」

「…本当に優しいね。」

「俺は優しくなんてない。俺も自分勝手にしてるだけなんだ。」


斗亜は告白を断った後まで優しい人だ。

それが恨めしくもあり、嬉しくもあった。


「引っ越し先では誰にでもこんな風に優しくしたらダメだよ。私みたいに勘違いしちゃう女の子だっているの。」


冗談めかして私はそう言った。

変わらず優しくしてくれる彼への精一杯の強がりだった。