忘れられた恋の物語

斗亜は私においでと手招きをした。


「いいよおんぶなんて。」

「乗り物だと思って乗ってよ。仲直りの印だと思って。」


そう言われると断れなくて、私は無言で斗亜の背中に乗った。そんな私に彼が少し笑った気がした。


「立ち上がるよ。掴まって。」

「うん…。」


立つ時の揺れが少し怖くて、彼の首に回した腕に少し力が入った。

そのままゆっくり歩き出した斗亜は言った。


「さっき俺が言ったことは気にしすぎないで。」

「何のこと?」

「"心配させるな"って言ったこと。柚茉には好きなことをして生きてほしい。絶対に心配をかけるなって意味じゃない。」

「…わかってるよ。でも不安にはさせないようにする。」

「…ありがとう。」