"慣れ"というものは怖いもので、私が柵の外に座り込んでいても誰も気にも留めなくなった。

私にとってそれは楽で自由になれたような気がしていた。



今、この瞬間までは。



「そこで何してるんですか?」


後ろから声をかけられて振り向くと、知らない人が立っていた。

真っ白な病院では見慣れない金髪で、年齢は私と同じくらいに見える男子だった。


「まさか死のうとしてる?」


私にそう聞いた時の表情が本当に悲しそうで驚いた。

見知らぬ人である私を、本気で心配してくれている良い人のかもしれない。

今までもこの光景を初めて見た人に"死なないで"と止められたことがある。この人もそうだと思った。