忘れられた恋の物語

「斗亜…?」


こんなにも優しい笑顔で、優しい瞳で、誰かに見つめられたことがなかった。

心臓が音を立てている。

でもこのドキドキは病気のせいではないとわかっていた。

私は斗亜のことが好きなのだと。いつの間にか彼に惹かれてしまっていたのだと。それが彼といるとこんなにも心臓の鼓動が速くなる理由なのだと。

その時、斗亜がそっと風で乱れた私の前髪を直してぽつりと言った。


「柚茉…。もう俺には時間がないんだ。だからそんな目で俺を見つめないで。」

「…そんな目?」

「…柚茉を忘れられなくて、心残りになりそうだから。」