「初めてだったの?」

「うん。私が乗り物に乗れないからお母さんもお父さんも私を遊園地には連れてこなかったの。」

「だから今日来たいって言ったの?」

「そう。斗亜は私の病気を知らないと思って。でも本当に乗り物に乗る気はなかったの。」

「そうだったんだ…。」


少し考え込むような素振りを見せた斗亜が、ふと私の手を掴んだ。

急に手を繋がれてびっくりもしたけれど、ドキドキして緊張もした。それなのに見上げると斗亜は何でもないような顔をしていた。


「行こう。」

「ん?どこに行くの?」

「せっかく来たんだから楽しまないと!」


そう言ってニコッと笑った斗亜は、私の手を引いて歩き出した。

私は行き先よりも、ぎゅっと握られた手の方が気になってしまって恥ずかしさから下を向いて歩いた。