忘れられた恋の物語

今度は彼が子犬のような瞳を私に向ける。

でも土曜日までは会えない。

学校で疲れているのに無理をして放課後彼と会ったら、体調が悪くなるかもしれない。


「うん。土曜日にしよう。」


私がそう言うと彼は残念そうに頷いた。

これが私と彼が初めて会ってから3回目の出来事だ。

何も変わったことが起きたりする訳ではないけれど、彼といると楽しかった。

相手がどんな人かも知らずに仲良くなったのは彼が初めてだった。それにも気付かないくらいにいつの間にか彼のペースに巻き込まれていた。

急に現れて1か月後にいなくなるという彼がどこの誰なのか、疑問に思うこともないくらい自然に。