忘れられた恋の物語

「お腹空いてる?」


聞こえなかったと思ったのか彼はもう一度質問をしてくる。でも私が聞き返したところはそこじゃない。それに今まで気が付かなかったけれど、自然にため口で話していた。

それなのに私を呼び捨てにした張本人は不思議そうにしているだけだった。

私だけが動揺しているのだ。

それを悟られたくなくて私は無理やり普通通りに振る舞った。


「お腹空いた。そろそろお昼の時間だよね。」

「このカフェ、ランチもやってるみたいだよ。ここで食べる?」

「うん。そうだね。」


お互いに食べたいものを注文し終わり店員さんがいなくなると、少しの間2人とも無言になってしまった。

その静寂を破ったのは彼だった。