澪さんは本当にすごい人だ。

飛田さんがまた現れたことで、たくさん悩んだだろうに前を向いて歩んでいるのだ。

もしかしたら飛田さんのためにも、前に進んだのかもしれない。


「澪さんに幸せになってほしいです。」


本当に心から。


「逢田さんの記憶からは…芦名さんは消えているはず。」

「柚茉にも幸せになってほしいです。俺を幸せにしてくれた何倍も。笑って生きていってほしいです。」

「大丈夫。逢田さんなら強く生きていくはずです。」


その言葉に頷くと、飛田さんも俺を安心させるようにゆっくりと頷いた。


「…本当に好きだった。」


小さくそう呟いた声は誰にも聞こえることはなかった。

この想いはもう俺だけが覚えている。


どの恋も本気で相手を好きになれば自分に何かが残るもの。

それが習慣でも、変化でも、愛情でも、涙でも。

俺に残ったのは純粋に柚茉だけを見つめた時間。


大切な初恋の物語だ。




END