彼はぐっと何かを堪えるような表情で言った。


「澪は…覚えていたんです。私のことを。」

「えっ…?」


制度が終わったら生者の記憶からはすべて消えるはずだ。そういう契約のはず。

それなのになぜ?


「自分の正体を澪に話したことへの罰は、この仕事に就いたことだとずっと思っていたんです。でも…。」


…もしかして。


「罰は澪の記憶を消さないことでした。だから澪はずっと私のことを覚えていたんです。」

「澪さんが覚えていたなら…。」

「俺が1人にしたのに…。死んでからも混乱させて、苦しめて…。俺は何をやってるんだ。」


飛田さんは話したことを心から後悔していた。


「それなのに言ったんです。"あれがもし本当にあんただったんなら会いに来てくれてありがとう"って。」