忘れられた恋の物語

受付を終えて病院から出るとそこに彼が立っていた。

私を見るとすぐに駆け寄ってきて、ニコリと笑う。


「終わりました?」

「…ここにいたんですね。」


私の言葉を聞いた彼が焦ったように言った。


「あっ!もしかして探しましたか!?俺が外に出てるって言わなかったからですよね!」

「探してなんていません。そのまま出てきただけです。探す理由なんてないでしょう。」


…何でこんな言い方をしたんだろう。これではいなくて拗ねたみたいに見える。

言ってから後悔したけれどもう遅い。

でも彼はそれに気付かないようで、まだ焦っている。


「そうですよね。すいません。…それなら今から少し話しませんか?」

「いえ。私もう帰ります。」


勝手に恥ずかしくなった私はそのまま帰ろうとしたけれど、その腕を彼が掴んだ。

この前のように、また優しい力で。

だから振りほどこうと思えば出来るのに、私は立ち止まってしまうのだった。