近くにあったパーカーとジャージのズボンを手に取った斗亜は脱衣所に入っていった。

それを確認してから私はスウェットのズボンから手を離した。ぶかぶか過ぎて持っていないと下がってしまいそうで不安だったのだ。

ウエストの紐が調節できそうなのを見つけてぐいっと引っ張った。これでもう大丈夫そうだ。

私は部屋を見渡しながらさっきまで斗亜が座っていた椅子に腰を下ろした。


「ここで1人で過ごしてたなんて…。」


勝手に家族と住んでいると思っていたけれど、今は1人なら寂しかったはず。

何気なく時計を見ると18時半を過ぎていた。

こんな時間まで誰かと外にいたのは本当に初めてだ。

携帯を見るとお母さんから連絡が来ていた。休日にこんな時間まで家を空けたことがなかったから心配しているのだろう。『もうすぐ帰るね』と返信して携帯をしまった。