困って考え込んでいた斗亜がふいに言った。


「すぐ近くに俺が泊まってるホテルがあるんだ。」

「え?なんでホテルに?お家は?」

「うーん。なんていうか家はもう引き払ったけど、俺はまだやることがあるから残ってる感じ。だから少しの間ホテルで暮らしてる。」

「なるほど。そうだったんだ。」


頷いた斗亜はおそるおそる言った。


「だからとりあえず俺の部屋まで来ない?こんなに濡れたままじゃ柚茉の体にも悪いし、そこになら傘もあるから。」

「…じゃあそうしようかな。」

「それならタクシーで行こうか。濡れないように。」

「えっ。タクシーは高いよ。」

「本当に近いから大丈夫だよ。ほら行こう。」


斗亜に手を引かれて私たちは彼の泊まっているホテルへ出発した。