その後も旅は順調に進んだ。新が言っていた通り、木賃宿に泊まったのはあの初日だけ。

今の所三泊したけどどっちも芭蕉の弟子の家に泊まったから。ちなみに、あの日に覚えたご飯の炊き方はまだ実践できていない。個人的にはさっさと実践をしたいんだけどね。

で、今日、四月一日。エイプリルフール(まぁ、江戸時代だから全く関係ないけど)。わたしたちは最初の目的地、日光まで後一里のところまできていた。

「そういえば、曾良はなんで日光に行きたいと思ったのですか?」

変装している時、新はわたしに向かって[曾良]と言うし、敬語を使ってくる。かと言うわたしも[芭蕉]の弟子だからもちろん敬語。ものすごくむずむずする・・・!

「二日目、たまたま出会った女性にどこへ向けうのか聞かれてしまって。咄嗟に日光に行く予定だと答えたら彼女の娘の分もお参りしてほしい、と」

「!そんなことがあったのですね。それならきちんとお参りしましょうか」

「はい」

そんな会話をしていると目の前に陽明門が見えてきた。実はわたし、日光に行ったことがない。つまり、日光東照宮に行くのも初めてってこと。正直、めちゃくちゃ興奮してるよ!

「うっわぁ・・・」

思わず素の声が出ちゃった。いや、でも、めっちゃ綺麗!そんでもってかっこいい!今すぐ写真撮りたい!

「・・・卯月朔日、御山に詣拝す。往昔、此御山を[二荒山]と書しを、空海大師開基の時、[日光]と改給ふ。千歳未来をさとり給ふにや、今此御光一天にかゝやきて、恩沢八荒にあふれ、四民安堵の栖穏なり。猶、憚多くて筆をさし置ぬ・・・」

急につぶやかれた文にわたしは慌てて矢立から筆を取り出しす。

実は、旅に出た後で分かったことだけど、あの『奥の細道』の文章を書いたのほホントに新が書いてた。

今みたいにふっと頭の中浮かんで発した文をわたしが書き留める、って感じ。[曾良]の設定を考えている時に漠然と「才能ありそうだなぁー」って思ってたけどホントにあった。マジびっくり。

ってか、この特技、先に言ってて欲しかった。最初に言われた時は急すぎて書き留めてなくって、後でめっちゃ怒られたから。

「俳句は?」

「えっと・・・あらとうと 大葉若葉の 日の光・・・かな?」

「わかりました」

これももちろん書き留める。これも[松尾芭蕉]に書いてるけど後でわたしは見れないから書き留めておかないと。

「それじゃあ、お参りに行こうか」