「待て」

(・・・え?どこから?)

戸惑っているとまた「待て」。あ、わかった。下から、だ。

(ってことは、え?声の主は徳川綱吉さん?まじ?思ってたよりもイケボ・・・)

それよりもどうしよう。別に止まってもいいんだけど。それはそれでめんどくさいし、待つ必要性も感じられない。うん。無視かな?

「よっと、ってちょ・・・!」

逃げようとした途端、いつのまにか近づいていた相手さんに首を絞められた。ちょ、痛い痛い!

「綱吉さま、此奴、どう致しましょうか?」
「私の前に連れてこい」

「は?え・・・ぎょ、御意」

そう言ってわたしを抱えたまま下に飛び降りる。今、一瞬戸惑ったでしょ。ダメじゃない、忍者なら主様の言うことはちゃんと従わないと。まぁ、流石に今のはわたしもびっくりしたけど。

「ほぉ、此奴が・・・」

急に明るいところに連れてこられて目を細める。わたしは首をしめられながら目の前にいる相手、つまり徳川綱吉さんを見る。

(あ、意外にかっこいい。確実に肖像画よりは)

シュッとした顔立ちだ。全体的にほっそりした印象。そこら辺は肖像画と変わんないかも。でも、目が大きい。うん。ぱっちりしててそこだけアンバランスな感じだけど、それはそれでイケてる、ような気がする。

「・・・此奴、女子では?」

じっと目を合わせているとふと綱吉さんがつぶやく。え?今まで男子だと思われてたの?

「は?・・・ま、真ですか?」

相手さんは無意識だろうか、片手で首を絞めたままわたしの胸に手を伸ばそうと手を伸ばす。

「ちょ、ストップ!やめて!」

「グフッ!」

咄嗟に立ち上がって首を絞めていた手を使って背負い投げ。んでそのまま足を彼のお腹に叩きつける。流石にこれは正当防衛だと思う。ってか、これで正当防衛じゃなかったら日本の法律どうなってるの?って殴り込むよ。

「ちょっとなんですか⁉︎確かめたかったのはわかりますけど、だからって胸を触るってどういう神経しているんです⁉︎本当だったらわいせつ罪で警察行きですよ⁉︎ってか、今から行きます⁉︎」

感情のまま叫ぶと慌てたように綱吉さんがわたしの方に触れる。

「すまない。彼はちょっと、いや、だいぶ女子に対する扱いが慣れていないから」

なんか申し訳なく思っ手「あ、そうなんですね」って言って足をどける。

(なんか、綱吉さんとは仲良くなれそう・・・かも)

ちなみにその女の扱いに慣れていない人はまだお腹を抑えて咳をしている。あのねぇ、忍者なんだからもうちょっと体鍛えておくべきじゃないの?