二人が脱力すると、さすがのウィリアムも理解したらしい。
 二秒ほど固まった後――はにかむように口角を上げた。

「そうだな……。彼女のことは……愛しているよ」

 ――その言葉が果たして真実なのか、二人にはわからなかった。けれど今までまともに女性と付き合ってこなかったウィリアムが言うのだから、少なからず気持ちはあるのだろう。

「ほらな! 最初からそう言えよ!」
「なぁ聞かせろよ! あのおてんばお嬢様をどうやって口説き落としたのか!」
「やっぱり、彼女の気の強いところに惚れたのか?」

 二人は(せき)を切ったようにまくしたてる。
 するとウィリアムは、二人の言葉に微かに動揺した。

「そういえばお前たち、彼女とはいったいどういう関係なんだ。パブに行く仲というのは本当か?」

 ウィリアムはそう問いかけて――ようやく気付く。アメリアの姿がないことに。
 アメリアだけではない。アーサーとルイスの姿も見えないではないか。
 ――ウィリアムの心に広がる、嫌な予感。

「エドワード、言え。アメリア嬢はどこにいる」
「いや、俺たちは知らないよ。その辺りを散歩でもしてるんじゃないのか?」
「あぁ。でもそういえば、こっちに来るときアーサーと二人で歩いてるのを見かけたな」
「……何?」

 ウィリアムは顔をしかめる。

「俺は彼女を探しに行く。お前たちはここで待っててくれ」

 それだけを言い残し、ウィリアムは駆け出した。

 その背中を見つめ、二人は呟く。

「悪いな、アーサー。時間切れだ」
「俺たちだってウィリアムには幸せになってもらいたいんでね」

 これからまだひと悶着ありそうだ――そんなことを考えながら、二人はウィリアムの姿が森の奥へと消え去るのを、黙って見送っていた。