ウィリアムは双子から、彼らがアメリアとどれほど交流があったのか知らされていなかった。当然ルイスからも、何一つ聞かされていなかった。
 けれどそんなウィリアムでも、今日の双子の態度がアメリアを嫌っているものではないことを悟っていた。

「確かに彼女には悪い噂もある。その事実を否定したりはしない。火のないところに煙は立たないと、昔から言うしな」
「――なら!」
「それでも……それが彼女の全てだとは、俺は思わない」

 ウィリアムの真摯(しんし)な眼差しに、カーラは唇を噛み締める。

「騙されているとは……考えませんの?」

 震える声で、彼女は呟く。

「わたしは……ウィリアム様のことを思って……」

 悲しげに、切なげに、愛しげに揺れる瞳。
 けれどそれがウィリアムに届くことはない。

 ウィリアムは――彼女にとって何よりも堪え難いその事実を突きつけるために――ゆっくりと口を開けた。

「たとえそれが事実だったとしても、君が口を出すことではないよ」
「――っ」
「そろそろはっきりさせよう、カーラ。俺は君の気持ちには応えられない。君のことは可愛いと思っているが……それはあくまで従妹(いとこ)としてであって、家族に感じるような愛情だ。恋ではないよ」
「――――」

 刹那……カーラはその場にへたり込む。

「もっと早く君に伝えるべきだった。俺が悪かった。すまない」
「そ……んな……、だって……だって……」

 カーラはとうとう泣き出した。
 さっきまで赤かった顔を蒼くして、彼女は大粒の涙を溢れさせる。その頬に、次々と涙が零れ落ちていく。

 けれどウィリアムが彼女に触れることはなかった。

 ウィリアムは嗚咽を上げ悲しみに暮れるカーラを、感情のない瞳で見つめるばかりだった。