午後八時を過ぎた頃――三人は夜の街を歩いていた。
 エドワードとブライアンがこの時間に街中を歩くのは、これが初めてのことである。

 左右に建ち並ぶレンガ調の建物。お世辞にも明るいとは言えないオレンジ色の街灯でぼんやりと照らされた街の景色は、昼間とはまるで別物だ。

 日中には人通りのない路地に並ぶ店は、夜になると開店し、酒を飲んで談笑する仕事終わりの男たちで溢れる。そんな男たちを誘うべく集う若く美しい女たちの姿もあった。

 二人はそんな夜の日常を物珍しそうに眺め、街そのものが醸し出すミステリアスな雰囲気に形容しがたい興奮を感じていた。

 ――と同時に、二人はアメリアの迷い無い足取りを不思議に思う。

「なぁ――アメリア、もしかして君はいつもこんなことをしてるのか?」

 エドワードが尋ねる。
 けれどアメリアから返ってきたのは、「初めてですわ」という、あまりにもわかりやすすぎる嘘であって……。

「これはとんだおてんばお嬢様だな」
「まったくだ」

 二人は口々に言いながら、けれど結局足を止めることなく、どこまでもアメリアの後を追いかけるのだった。