「――それが……本当のあなたなのですね」
「そうよ。わたしとあなたは婚約したわ。あなたはわたしの夫になるのよね。なら、わたしはあなたと二人きりのときは、これからはずっとこのわたしよ」
「それは……少し嬉しいな」
「ご機嫌取りなんていらないわ」

 アメリアはウィリアムを冷めた瞳で見返す。

「今からあなたの質問に答えて差し上げる。けれど、その前に一つだけ誓ってほしいことがあるの」
「……誓い?」

 ウィリアムは眉をひそめる。

「もし誓えないと言ったら、どうなる?」
「誓えないならこの婚約は撤回よ」
「――はっ」

 アメリアの平然とした物言いに、さすがのウィリアムも不快感をあらわにする。
 けれどまずは内容を聞いてみなければ始まらない。ウィリアムは覚悟を決める。

「誓いの内容は?」

 ウィリアムが尋ねると、アメリアは一瞬()を置き――ゆっくりと口を開いた。

「あなたはわたしを決して愛してはいけない」
「……は?」
「誓って。わたしを決して愛しはしないと」
「…………」

 アメリアの表情は真剣そのものだった。決して冗談を言っている風には見えない。

 しかし、だからこそウィリアムは困惑した。
 結婚するはずの相手に自分を愛するな、とはいったいどういう意味なのか。どんな意図があってそのようなことを誓わせるのか、彼には見当もつかなかった。