「ダンス、お上手なのですね」
言いながら、ウィリアムはやや挑発気味にステップを踏んでみた。
だがアメリアは乗ってこない。
「そんな、ウィリアム様こそ本当にお上手ですわ」――そう言って微笑むだけ。
仕方なくウィリアムは、直接的な方法を取る。
「アメリア嬢ともあろう方がご謙遜なさるとは……よもや本当に私に好意を寄せている訳ではあるまい?」
そう言ってニヤリと口角を上げる。すると、アメリアは笑みを深くした。
「あら。そのお言葉、そのままお返ししますわ」
刹那――アメリアの冷たい笑顔に、ウィリアムは悟った。
「……やはり。――なぜあなたは私の申し出を受けたのですか」
「変なことをお聞きになるのね。わたしはただお受けしただけ。理由などないわ」
二人は足を止めることなく踊り続ける。
「だが、あなたは私のことを嫌っておいでだったのでは」
「あら……なぜ? ルイスがそう言ったの?」
「――ッ」
「驚いたのはこちらの方よ。わたしを調べるようにルイスに指示したのは……あなた?」
「……それは」
それはまたもや予想外の言葉で、ウィリアムは咄嗟に否定することができなかった。
まさかアメリアがルイスについて知っているとは――ルイスがアメリアの周辺を調査したことに気付くとは思ってもみなかったのだ。
けれどアメリアは気が付いた。その上でこの縁談の話に乗ったというのか。
「……本当に素直な方」
アメリアは呟く。――と同時に音が止んだ。終曲だ。人が入れ替わっていく。
そのざわめきの中、ウィリアムを誘い出すアメリア。
「ウィリアム様、少し夜風に当たりませんか? わたくし――少し暑くなってきましたわ」
「……ああ、そうだな。そうしよう」
――こうして二人は会場を抜け、先客のいないテラスへと向かった。