――さあ、君はどう出る……?

 ウィリアムはアメリアの反応をじっとうかがっていた。お茶会でのアメリアの態度を思い出し、これからアメリアがどう出てくるか、それを興味津々に見つめていた。

 一方アメリアは――アメリアもまたウィリアムの顔色を観察していた。
 彼女にとってウィリアムの告白は当然予想外の出来事だったが、たとえこれが不測の事態であろうと、彼女は隙を見せるわけにはいかなかったからだ。
 自分の予想の上を行くウィリアムの言動に――卑怯とも言える(おおやけ)での告白にある種の殺意を覚えようとも、決して表に出すことは許されなかった。

 ――ああ、まさかこれもルイスの入れ知恵なのかしら。それともこの人の独断……?

 だがどんな理由であろうと、こんな公衆の面前でウィリアムを振るわけにはいかない。
 何しろ相手は侯爵家である。つまり、今取り得る選択肢はただ一つ。

 仕方なく、彼女はその頬を赤く染めあげた。まるで恥じらう乙女のごとく。
 そして、告げた。

「わたくし――も、お慕い申し上げております、ウィリアム様」

 正直に言えば、もっと無難な言葉はいくらでもあった。「恥ずかしい」とうやむやにしてしまうこともできた。
 けれどアメリアは他の全ての選択肢を一瞬のうちに切り捨て、ウィリアムに応えたのだ。

 ――再び、二人の間に沈黙が流れる。

 その沈黙の中、ウィリアムは今まで感じたことのないほどの興奮を感じていた。そんな自分自身に、戸惑いを隠せなかった。

 悪女と名高いアメリアのことだから、皆の面前であろうと容赦ない態度を取るだろうと考えていたのに。それがまさか、嫌っているはずの自分を慕っているとのたまうアメリアの潔さに、猜疑心(さいぎしん)を感じるとともに心底感服した。

 ここまで来たら、引く道はない――。

 ウィリアムは決断し、アメリアの前に進み出る。
 そしてその場に跪くと、アメリアの右手にそっと口づけた。

 ウィリアムは愛しげにアメリアを見つめる。

「アメリア嬢、私と結婚してください」

 その言葉にふわりと微笑む、アメリア。

「わたくしでよろしければ――喜んで」