どちらにせよルイスは知ってしまったのだ。私が全ての人間に対し嫌悪を露わにするわけではないと。
 そして同時に気付いたのであろう。お茶会での私の傲慢で冷酷な態度が偽りであったことに。そしてそれをウィリアムに進言した。

 もしかするとルイスは、私がただの令嬢ではないことにも勘づいているのかもしれない。

「とにかく、このままじゃまずいわね……」

 外堀を埋められてウィリアムと婚約――などとなってしまったら本当に取り返しがつかなくなる。もしそうなったら、彼の命は助からない。

 ルイスについての情報はこれ以上手に入らない。彼がいったい何を考えているのかも、知りようがない。手札がないまま近付くのは危険だろう。
 だがウィリアムにならば、まだ付け入る隙があるかもしれない。

「……こうなれば正攻法よ」

 押して駄目なら引いてみろ。昔からそう言うではないか。お茶会では引いてしまったのが最大の敗因。ならば次は真っ向から断ろう。
 ルイスのいないときを狙い、ウィリアムと二人きりになって直接断れば良い。今さら手段など選んでいられないのだ。

 部屋のカーテンを開け放てば、木漏(こも)()が部屋に降り注ぎ、重苦しい空気が一瞬で霧散(むさん)する。

「ウィリアム・セシル、待っていなさい。私があなたを決して死なせはしないわ」

 私は(おのれ)の心に刻みつける。何があろうと、絶対に彼を死なせはしない――と。