信じられなかった。信じたくなかった。アーサーがアメリアを(はずかし)めたなどと……。

 苦悩するウィリアムに、ルイスは懇願するように告げる。

「ウィリアム様、私が――私がアメリア様を推薦しなければ、こんなことにはならなかったのです。アメリア様の声が失われ、アーサー様と仲違いされてしまわれたのは全て私の責任でございます」
「……ルイス」
「アメリア様は今とてもお心を痛めていらっしゃいます。昨日、あの方は確かに私に微笑んでくださった。けれどそのご様子は、以前とはまるで別物でした」

 ルイスの漆黒の瞳が、切なげに揺れる。

「ウィリアム様はあの方をお愛しにはならないでしょう。それに、あの方もウィリアム様をお愛しにはならない。そういう契約でございましたよね。けれどそれでも、今あの方をお守りできるのは、ウィリアム様……あなたしかいないのです」
「……っ」

 刹那――ウィリアムは確信した。

 ルイスの心の奥に秘められたアメリアへの強い想いを。アメリアが川に落ちたとき、今までになく動揺していた、ルイスの様子を思い出すと共に――。

「……ルイス。お前は彼女を愛しているのだな」
「――ッ」

 ウィリアムの確信に満ちた問いに、ルイスは顔を強張らせる。

「いつからだ?」
「…………」
「いいんだ。責めてる訳じゃない」

 そう言ったウィリアムの眉間には深い皺が寄っていたが――それでも、主人に問われれば答えないわけにはいかない。――ルイスは呟く。

「十年前から……です」
「十年だと……⁉」
「……はい」
「それほど前から彼女を知っていたのか? では、彼女を婚約者に推した本当の理由は……」

 その可能性に思い当たったウィリアムは、困惑げに顔を歪めた。