再び私はペンを取る。

 ルイスは私が手帳に質問をしたためている間に部屋の窓を開け放った。
 同時に風が吹き込んで、白い梟が窓から飛び込んでくる。
 梟はルイスの左腕に行儀よくとまった。

「いい子だ」

 ルイスは梟に温かな眼差しを向け、その白く美しい羽毛(うもう)を手の甲で優しく撫でる。
 すると梟は、気持ちよさそうに目を細めた。

 その光景に私は驚かざるを得ない。なぜって、人に懐く梟など久しく見ていないのだから。

 ――それだけではない。
 梟は通常夜行性。それなのに昼間でも飛べるとは、よく訓練されている証拠だ。

 私が梟を見つめると、ルイスは平然とした様子で微笑んだ。

「この梟は僕のしもべ、名前はベネス。あなたの居場所を教えてくれたのも、ベネスですよ」

 そう言って、紙切れのようなものをベネスの足にくくりつけた。
 べネスは主人の「ウィリアム様のもとへ」という言葉を合図に、窓から飛び立っていく。

 ――その光景に、私は確信した。

 ああ、やはりそうなのだ。ルイスも私と同じく前世の記憶を持っているのだ。

 戦争の無くなったこの平和な時代に、わざわざ梟を使って手紙をやり取りする必要はない。つまりそれは、今の時代に梟を手懐ける術自体が無くなったことを意味している。
 けれどルイスはそれができる。それが意味するものは、即ち――。

 私は質問をしたためた手帳を、彼に向かって差し出した。
 彼は手帳に視線を落とす。

「一つ、僕が何者であるか。二つ、僕があなたを探していた理由。三つ、アーサー様の力の詳細……ですか。まぁ妥当なところですね」

 ルイスは私の向かいの椅子に腰かけると、躊躇(ちゅうちょ)なく口を開く。

「時間はたっぷりありますし、順番にいきましょう。まずは僕が何者であるのか――ですが」

 ルイスは意味ありげな笑みを浮かべ、およそ真実であるとは思えないような素性を語り始めた。