さっき友達とたくさん撮った写真を見ようと、フォトアプリを開く。
そのとき目に入ってきた、膨大な写真の量を示すアプリ内の数字を見て、私は一瞬固まった。
「一万九千枚…!?」
このスマホを使い始めて二年、どうやら二万枚近くの写真を、撮ったり保存したりしていたみたい。青春の瞬間を残したくなくて、忘れたくなくて連写しまくったものもたくさんあるから数が増えたのかなぁ。
「まじか…少しは消さないと」
友達との写真を見るだけの予定だったけど、急遽アルバム整理もすることにした。ちなみに友達と撮った写真は、私にしては珍しく目もつぶってなかったし事故ってなかったから許容範囲としよう。
最新のものから見ていくと、同じような写真がたくさん。変わってるのは目を瞑っているかいないかぐらいで、間違い探しの問題だとすればかなりの難易度な気がする。
スクロールして、いらないものはまとめて消していく。下に行けば行くほど、懐かしい写真が多くなる。
「このときは確か…ミキのサンダルが海に流されたんだっけ」
それを思い出して、少し吹き出す。あのときのミキの慌てようは、かわいそうだけどすごく面白かったことを今も覚えてる。
友達とのもの、ビジュが良すぎて思わずスクショした推し、草むらで見つけたかわいい花、元カレとのツーショット。
掘り出してもキリがないぐらいの思い出たち。不思議なくらいに鮮明に、脳内を彩っていく。
古い写真を見返すことはほとんどないけれど、こうしてときどき思い出に思いを馳せる時間も悪くないよね。懐かしさに浸りながら、写真の削除とフォルダ分けを繰り返してやっと、終わりが見えてきた頃。
それまでとはまた違った写真を見つけた。五歳ぐらいの女の子と男の子が顔をくしゃくしゃにして笑っているワンシーン。カメラを持つ人に呼ばれて振り向いたときのものなのだろう、小さな二つの背中がとってもかわいらしい。
「いつのものだろう…?」
二人はおもちゃのスコップを持っていて、砂場で遊んでいたようだ。
女の子の方は私だよね。
「この男の子は…」
しばらく思案して、ふっと思い出した。
笑うと細くなる優しげな目が印象的なこの男の子はきっと、ハルト君だ。当時の私が好きだった男の子。そうだ、この写真はスマホを買い替えたときにお母さんから「持っときなよ」と送られてきたものだ。なんで送ってきたのかはわからないけれど。
この頃は五歳だったから、もう十年も前のことなんだな。だけどちゃんと脳に残ってる。あの頃の写真を見つけて、名前を思い出して、当時の記憶がクリアーに甦ってきた。