家に帰ったらまだ、おかえりって声がしそうで
涙をこらえて手を洗う
あぁ、
ほんとにしんじゃったんだ
部屋に戻ってひとり、写真立ての笑顔を見て考える
いえにかえっても、どこにもいない
もう、会えないんだ
どんなに呼んだって答えてくれない
急に実感がわいて涙が止まらなくなる
「ぅ、ッ」
いたいよ、
心が
胸が
苦しい
寂しい
発作なのか、心の痛みなのか分からない
ガチャ
「絃音、」
はやくんが抱きしめてくれる
「はや、くんッー」
2人で号泣する
階段を上がる足音が聞こえてきて、
扉が開く
「お前ら、やっと泣けたのか。...葬式で、泣いてないのはお前ら2人だけだったよ。」
実感がわかなくて、
心のどこかでまた、会えるんじゃないか、話しかけたらまた答えてくれるんじゃないかって思ってたんだと思う
でも違う
もう会えない
「しんじゃった人は、戻ってきてくれない。でも、颯も、絃音も。ひとりじゃないんだよ。俺もいるし、お互いもいる。俺は絶対2人を離さないし、ずっといっしょだから。」
その言葉が欲しかったのかもしれない
もう誰も失いたくない



