「俺、一年の吉田といいます。こっちは……」

「あ、同じく一年の星野です……」

 吉田と二人、先輩らしい男子生徒に頭を下げる。

「え?ああ」

 先輩はまだ俺たちを警戒をしているらしくどこか素っ気ない。

 吉田は続けた。

「俺、この『二次元同好会』に入りたくて……!!今や世界に知られた立派な日本の文化である、アニメやゲームを発信するこの会!それが、その日使っていない空き教室を充てがわれていると聞いて俺、それは違う、って……!!」

 ……よっしーのスイッチが入った。
 それに、こんな扱いだからこの同好会はどこでやっているのか分からなかったのか……

 だいたい、吉田がどこからこの同好会の情報を仕入れたのか不思議で仕方がない。

 そもそもこの同好会、今日紹介はあったっけ??

ガシッ!!

「!!」

 先輩はいきなり吉田の肩を掴んだ。

「吉田、良く言ったっ!!俺たちで、この素晴らしい文化を発信しよう!!」

「はい、世界に発信しましょう先輩!!」

 吉田の肩を叩きながら喜ぶ先輩、満面の笑みの吉田。
 そして……

「吉田は入会決定だ!!それで、星野は!?」

 先輩と吉田は勢いよく振り向き、吉田の斜め後ろにいた俺に声を掛けてくる。
 俺はしどろもどろ。

「え、いえっ、すみませんっ!僕は決めている部活動がありましてっ、今日は吉田くんに付き添っただけなので……」

 俺は苦笑いでなんとかそう返し、礼をしてどこかぎこちなくなりながらその教室を出ていった。


 俺はけっきょく朝練習もない美術部に、全く何事もなく入ったのだった。

 ちなみに吉田の二次部(二次元同好会)情報の仕入れ先は、未だに謎のままだ。