それはアニメイラスト調の『ヒヨコ嬢』という名の人間型の女の子たちと“遊ん”で、“エサ”という名のチョコレートをあげて育て、
一人前の『ミス・ニワトリ』にするという“育成ゲーム”だった。

「まあでも、可愛いだろ?育て方で性格も変わる。ただし、“ヤンデレ”には気をつけな。初心者には面倒だろうから」

 トバ先輩は大真面目な顔でそう言った。

 ……“気をつけな”、じゃないです先輩。

 これは前に半ば無理やり貸されたギャルゲーの縁なのか。
(38ページ『番外編 トバ先輩の好み』内参照)
 先輩に勧められるがまま、俺は基本無料のそのゲームを始めたのだった。


 アプリを開き遊び方の説明を見終わると、ブカブカと大きめなセーターを着た女の子“ヒヨコ嬢”が笑顔で俺を出迎える。

『おはようございます、ご主人様!ピヨピッピッ♪』

 ヒヨコ“らしさ”って、この語尾だけなんじゃ……

 俺は心の中でそう思った。


 俺は育てるうちに次々浮き出てくる違和感やなんかに色々と心の中でツッコミながらも、暇なときに『ヒヨコ嬢』の世話をし続けた。

 性格を左右する“遊び”と“おしゃべり”、育成グッズの当たる無料ガチャ、“成長”のためのチョコレートあげ……

 そしてとうとう俺の『ヒヨコ嬢』は『ミス・ニワトリ』に成長した……
はずだったのだが。