「行ってきまーす!」

「お嬢、送りましょうか?」

「へーき!じゃね、悠生!」

「あの、お嬢」

「ん?」

「いや……なんでもないっす」

「なんだそれ」

「行ってらっしゃい」

「行ってきまーす!」

「……お嬢が染井のクソガキとなんて、ねぇよな……?」


* * *


 いつもと同じ通学路。いつもと違うのは。


「おはようございます、お嬢」

「!!」


 当たり前のように那桜が待っていること。
 ドキーン!と心臓が高鳴ってしまうこと。


「な、なんでいるの?!」

「お嬢に早く会いたいからに決まってるでしょう」

「っ!!」

「いや、俺の婚約者に、かな」

「だから婚約するとは言ってないからっ!!」


 まさかまさかの天敵である那桜と両想いになってから、一夜が明けた。
 未だに信じられない。


「てゆーか外でそういうこと言うのやめて!!誰が見てるかわからないじゃないっ!」

「大丈夫ですよ。今日は絶対来るなと脅してきたんで」

「いや大事な組員脅すなよ」

「別に俺はバラしても構わないんですが」


 そう言って私の手を取りチュッとキスする。


「むしろ世界中に触れ回りたいくらいですよ――鏡花は俺のものだって」

「な……っ」