ライバルなのに負けたくないのに、大嫌いなはずなのに


「全部引っくるめて那桜が大好きになっちゃったじゃん……っ」


 私にだけ向けるめんどくさくて重い愛が、たまらなく愛おしくなってしまった。

 敵同士とか組のこととか全部抜きにして、那桜のことが好き。
 悔しいくらいに大好き。



「やっと言いましたね」

「えっ」


 ニンマリと笑う那桜の笑顔はなんか黒い。


「お嬢が意地を張るからイジワルしたくなっちゃいました」


 こ、こいつ……!!


「何よ!傷つけたかなって気にしてたのに!!」

「傷つきましたよ?でも利用できるものは利用しないと」

「こんの腹黒極道!!」

「でも好きなんですよね?」

「〜〜っっ」


 悔しい。憎たらしい程いい笑顔のこの男が、それでも好きなことが悔しい。


「あ、あんただって私のこと好きなんでしょ!?」

「うん、好き」

「うぐっ」

「負けず嫌いで意地っ張りの鏡花がかわいくて好きだよ」

「っ!!」


 ……なんで私がカウンター食らってるんだ?
 なんで私ばっかりドキドキさせられてるの!?

 ずるい、悔しい。
 でも大好き。

 もう授業はとっくに始まってる時間なのに、渡り廊下近くの茂みの中で二人でハグしちゃってる。
 誰かに見られたらやばいのに、それでも離れがたいって思っちゃってる。

 那桜とずっとこうしていたいって本気で思ってる自分が一番信じられない。

 でも今は、今だけはバカになってもいいかな?
 色んなことは一旦捨て置いて、那桜と両想いになったこの瞬間を噛み締めてもいいかな――。


「俺と結婚してくれるってことですよね?」