悠生の背中をグイグイ押して那桜から引き離そうとする。
 私は背中にダラダラ汗をかいていた。

 悠生、どこから見てたんだろう……?
 まさか帰って来るとは思ってなかった。


「――鏡花!」


 那桜が声を上げるので、思わず振り向いた。


「また明日」

「っ!!」


 那桜ってば、わざわざそんなこと……!!


「ああん?」
「悠生!!行くよ!!」


 絶対わざと名前で呼んだな!?
 那桜のやつ、何考えてるのよ!!悠生にバレたらどうするの!?

 ……いや、何がバレたらまずいんだ?
 私と那桜の関係って――何?

 キスはしちゃったけど……。


「〜〜っ!!」

「お嬢?どうしたんすか?」

「えっっっ」

「顔真っ赤っすけど」

「ななな何でもないよ!?」


 とにかく悠生に何もバレてませんように!!


* * *


 その夜、桜花組は大宴会だった。
 悠生が帰ってきたということで、みんな大はしゃぎ。


「悠生〜!!飲んでるかぁ!?」
「俺まだ18っすよ」
「そうだっけか!!ワハハ!!」
「荒れ腐ってた小僧が成長したなぁ!!」


 悠生はみんなにとっても弟分として可愛がられている。桜花組に来たばかりの頃は、誰も何も信じられないというような、狂犬みたいな目をしていた悠生。
 今ではすっかり家族の一員だ。