「うえっ、げほっ」


 しかもなんか変なとこに入ったらしくて、思いっきり咽せてしまった。


「大丈夫ですか?」


 ゲホゲホする私にさりげなくハンカチを差し出してくれた那桜。こればっかりは素直に受け取った。

 ……なんか、流石に酷いな私。
 デートとか以前に女子としてヤバいと流石に思った。

 しばらくしたら治ったけど、なんかバカみたいでカッコ悪い。


「……那桜は、なんで私が好きなの?」

「え?」

「だってわかんないんだもん!私いっつも那桜に突っかかってるし、可愛げとかないし、今みたいにダサいとこもあるし!」

「自覚あったんですね」

「うるさい!八重みたくお淑やかさとか、上品さとか女の子らしいとこなんかないし……」


 自分で言ってて虚しくなってきたな……。
 そんな私の気持ちとは裏腹に、那桜はおかしそうに笑い出す。


「はははっ」

「何がおかしいのよ!!」

「いや、かわいいなぁと思って」

「私のことからかってる?」

「まさか。本気ですよ。俺は鏡花のそういうところも好きです」

「……っ!」

「正直どこが、と言われても困りますね。負けず嫌いなところも可愛げがないところも時々ポンコツなところも、鈍感すぎるところも全部かわいい」


 そう言って那桜は握っていた手にキスを落とす。


「――もっと聞きたいですか?」

「もういい、です」


 これ以上はもう無理だ、何かはわからないけど爆発しそう。
 残念、とニヤッとした那桜に不覚にもドキドキしてしまった。

 ――いや、もうとっくにドキドキしてる。

 本当はずっと、那桜にドキドキしてたんだ――……。