あれから。
 染井一家が一掃したことで詐欺グループは軒並逮捕。詐欺グループのリーダーは兼ねてより警察に恨みがあったらしく、八重を誘拐しようとしたのはその辺りが理由らしい。

 八重は無事だった。
 私が拉致された後、すぐに那桜を呼んだらしい。八重は私を見るなり、唇を震わせてぺちんと頬を叩く。
 全く痛くはなく、弱々しいビンタだった。それからぎゅっと私を抱きしめる。


「…………っっ」

「――大丈夫だよ。私はそんな簡単にやられないから」

「〜〜〜〜っっ」

「そういうことじゃないって?でも、もう大丈夫だから」


 私にしがみついたまま、声を震わせている八重の頭をポンポンと撫でる。

 まあとにかく一件落着だ。
 いや、落着はしていない。


* * *


「おはようございます」

「っ!?!?」


 翌日。学校まで送ります!という組員たちを振り切り、いつも通り歩いていこうとしたら、目の前に那桜がいた。
 思わず周囲を見回してしまう。


「何しに来たの!?」

「迎えに来たんですよ」

「!?」

「さあ、行きましょう」


 いやスタスタ歩いてるけど何言ってるんだ!?


「ちょっ、誰かに見られたらどうすんの!?つーかなんであんたと一緒に行かなきゃいけないわけ!?」

「お嬢と一緒に行きたいからですが?」