あんなやつ、知らない。どうでもいい。
 もう関わりたくもない。

 そう思っていたけど、なかなかそういうわけにもいかないようで。


「じゃ、染井と吉野、この資料整理よろしくな」


 放課後先生に声かけられたと思ったら、大量の資料の山を託される。


「ちょっ、先生なんで!?」

「うちの学年2トップに任せたらすぐに終わるだろ。頼むぞ」


 そんな決め方あるの!?
 全く関係ないと思うんですけど!?
 先生め、めんどくさくて適当に押し付けたな!!
 しかも、よりによって那桜と……!!


「よろしくお願いしますね、お嬢」

「……!!」

「サボらないでくださいよ?」

「それはこっちの台詞っ」


 あーー、もう最悪だ……。

 放課後残って授業資料の整理をすることになり、八重に料理を教えてもらうのはまた今度になった。

 今一番二人きりになりたくないやつなのに……。とっとと終わらせて帰りたい。


「お嬢」

「……」

「なんで俺を避けるんです?」

「……」


 聞こえないフリして無視を決め込む。
 無言でパチンパチンと資料をホチキスで留めていく。

 そうしたら突然、グイッと腕を引っ張られて無理矢理引き寄せられた。


「なんで無視するんですか?――鏡花」

「……っ」


 そのたまに名前で呼ぶのやめてよ……。