あれから、那桜のことは避けている。
 同じクラスだから顔を合わせないってことは無理だけど、話はしていない。


「お嬢……、」
「八重〜!今日八重ん家行ってもいいー?」


 あからさまに避けている。


「構いませんけれど、何かありましたの?」
「いや実は、うちの連中みんなお腹壊しちゃってさ。お詫びに何かお腹に優しいものでも作りたいから、八重教えてよ」
「……例のクッキーですわね?」
「あははははは」


 那桜に食べさせるはずの下剤クッキーは、渡すことなく家に持ち帰った。握りしめすぎて粉々に割れちゃったんだけど、「お嬢が作ったものなら!」ってみんな食べちゃって。

 止める間もなく、今我が家のトイレはずっと大渋滞になっている。


「だから言いましたのに」
「反省してるからさ〜。お願い、八重!」
「仕方ありませんわね」


 幼少期から数々の習い事をしていた八重は、料理の腕前もプロ級。少しでもお腹に優しくて美味しいもの食べてもらって、元気になってもらおう。


「……。」


 そして、さりげなく那桜から遠ざかる。

 那桜は何か言いたそうな顔をしている気がしたけど、気づかないフリをした。


「……鏡花、よろしいんですの?」
「何が?」
「那桜さん、何か話したそうでしたよ」
「知らない」