幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。



 那桜に会いたい。声が聞きたい。
 今頃何してるの?

 どうして何も連絡してくれないの?


「さみしいよぉ……っ」


 那桜のこと信じていても、ずっと音信不通だと不安になる。

 私はパパから染井一家に近づかないように釘を刺されている。
「勝手にしろ」とは言われたけど、私が不用意に動くと抗争の火種になりかねない。
 桜花組を守るためにも大人しくしていろと言われた。


「ただいま……」

「お、お嬢、お帰りなさい……」


 そしてあの日以来、何となくみんなと気まずくなってしまっている。
 もう私と那桜が付き合っていることは全組員にバレてしまい、それから何となくみんなよそよそしい。

 でも仕方ないよね……。
 みんなに黙っていたんだもん。騙していたとか、裏切られたと思われても仕方ない。


「お嬢、おかえりっす」


 私と変わらず接してくれるのは悠生だけだった。


「目、赤いっすよ」
「ちょっと目にゴミが入って」
「また泣いたんすか?」
「またって何……」
「ここんとこ毎日泣いてるじゃないっすか」
「泣いてないもん……っ」


 強がっても涙腺はガバガバで、また涙が込み上げてくる。


「お嬢……」

「泣いてないっ」


 必死になって目をゴシゴシこする。

 泣いてない、泣いてない。
 泣いたって現状が変わるわけじゃないんだから。


「――お嬢、もうあいつのことなんか忘れたらどうですか」