那桜パパの怒号が轟いた。
 声量と纏うオーラだけで木を薙ぎ倒してしまいそうな凄みがある。


「……」


 那桜は黙ってスッと前に出た。


「ここにいます」
「那桜……勝手なことばかりしやがって。染井の面子を潰す気か。帰るぞ」

「待ってください!!」


 私は咄嗟に那桜たちに駆け寄っていた。
「お嬢!?」とみんな止めに入ろうとしたけど、構わなかった。


「あの、那桜のこと殴らないであげてください!熱があって本調子じゃないんです。怪我もしてるので……!」

「鏡花……」

「それから、私たち本気なんです!」


 険しい表情の那桜パパを真正面から見つめる。


「過去のことは聞きました……でも、」
「何と言おうが、認めるつもりはない」


 那桜パパの視線は氷のように冷たかった。


「那桜を連れて行け」
「はっ」


 染井一家の組員二人が那桜の両腕を掴んで連れて行こうとする。


「――離せっ!」


 大人しく捕まる那桜ではなく、素早い身のこなしで応戦する。だけど那桜パパが不意を突き、那桜のお腹に重くて鋭い一発を入れる。
 流石の那桜も避けられなかった。


「……っ」

「那桜!!」


 私の懇願虚しく、那桜は気絶させられてしまう。


「とっとと連れて行け」
「はい」

「やだ!!那桜!!」
「離れろ、鏡花」