外に出てみて、その光景に唖然とした。
 黒塗りの車が何台も停まり、そこから何人ものスーツ姿の極道たちが現れる。

 極道ものドラマでこんなシーンがあったな。
 敵方の極道たちで大人数で横並びになり、今にも攻め込んでくる絶体絶命というシーン。

 だけどこれはフィクションじゃない、現実だ。
 染井一家が殴り込みにやってきた。


「染井のヤローども、討ち入りか……!?」
「返り討ちにしてやんよ!!」


 やばい、みんな殺気立ってる!
 このまま激突なんてことになったら大変だ。
 何とか止めないと!!


「みんな、待って……!」
「私が行く」


 パパがスッと前に出ると、騒ついていた組員たちがピタッと止まった。
 静かな足取りで前に進むパパ。

 目の前の車から長身の男性が現れる。
 口髭を蓄えたダンディなその人は、那桜の家で会った那桜の父・染井義徳組長だった。


「……久しぶりだな」


 パパたちが対峙するだけで、ビリビリとした痺れるような感覚に襲われる。


「うちの愚息を返してもらおうか」
「言っておくが、勝手に侵入されて迷惑被っていたのはこちらだが?」


 一言交わすごとに火花が散ってる……!!
 空気が重苦しくて見てられない。

 てゆーか那桜パパ、那桜のこと迎えに来たんだよね……?


「――那桜!!出てこいっ!!」