幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。



 突然窓を叩く音がした。
 びっくりして振り返ると、悠生がいた。


「悠生!!」


 私は駆け寄って窓を開ける。


「大丈夫っすか?お嬢」

「どうして?」

「組長が戻って来て染井一家に行ってから大騒ぎっすよ。詳しいことは聞かされてないけど、多分みんな何となく察してます」

「そっか……」

「お嬢……」

「私のしてることって、裏切りなのかな。
桜花組のみんなのことは大好きだし、大切な家族だと思ってるよ。本当だよ。
でも、那桜のことも好きなの……。
ただ好きなだけなのに、そんなにダメなのかな……?」


 また涙が溢れてきた。
 止めたはずなのに、ボロボロとこぼれ落ちる。


「那桜に会いたいよ〜〜……っ」

「……お嬢、本音を言えば、俺だって認めたくねぇ」

「悠生……」

「なんでよりにもよってあいつなんすか……他にいい奴いなかったんすか?」

「わかんない」


 そもそも私、これまで那桜に勝つことばっかりで、恋をしたいとか考えたことなかった。
 思えばずっと、那桜のことしか見てなかったんだ。

 嫌味ばっかで涼しい顔して私の上をいくムカつく奴なのに――


「でも、那桜じゃなきゃダメなんだ」

「お嬢……」

「ごめんね、悠生」