迎えにきたパパは、車の中で何も言わなかった。
 押し黙ったままの空気が重苦しい。

 私は意を決してパパに切り出す。


「パパ!あの、私……」
「話は帰ってから聞く」
「!」
「話の内容によっては、只では済まないかもしれないな」
「……っ」


 私はそれ以上何も言えなかった。

 桜花組の組長である父・和仁は厳しいところもあるけど、誰からも慕われ信頼される人物だった。
 どんな人物でも受け入れる懐の深さに感化され、元は敵だったけど桜花組に入った者もいる程。

 組長の人柄に惚れ込んでうちにいる組員たちはものすごく多いんだ。
 私はそんなパパを尊敬してるし、なかなか家に居られなくても私への愛情はちゃんと感じてる。

 私の誕生日に何をあげたらいいかわからず、さりげなく組員たちに聞き出そうとしてモロに私にバラされてしまったり。
 そんな不器用な一面もあるパパのことが大好きだった。

 だからパパ、ちゃんと話せばわかってくれるよね――?


* * *


 帰宅してパパの自室に呼ばれた。この部屋にはほとんど入ったことがない。

 私はパパと向き合って正座する。


「鏡花。単刀直入に聞く。染井の息子と通じているのか?」

「つ、通じているっていうのは……」

「桜花を裏切ったのか?」

「違います!私はただ、那桜のことが好きなだけ!」


 その言葉に、パパは目を見開く。


「私は今でも桜花組を大事な家族だと思ってるよ。裏切ったとかじゃないの。
那桜に恋してるだけなの……」

「鏡花、自分が何を言ってるかわかってるのか?」

「わ、わかってる。でも本気なの!だからお願いします、私たちのこと……」

「そんなことが、本気で許されると思っているのか?」

「……っ!!」