「はぁっ!!」


 気合いを入れ、掛け声と共に渾身の一撃で20枚もの瓦を全て真っ二つに。
 ガラガラという割れた音と共に周囲から拍手が湧き起こる。


「お見事ですお嬢!」
「よっ!お嬢世界一!」
「流石ですわ、鏡花」
「――って、なんで八重がいるのよ!!」


 桜花組の若い衆に混じり、のほほんと茶をしばく八重。ちなみに今は朝の6時だ。


「桜花組の家庭料理が食べたくなりましたの」
「ヘイ!八重姫の分もありますぜ!」
「ありがとうございます」
「自由か!!」


 誰も八重がいることに驚かないどころか、当たり前のようにもてなしている。


「それに感謝してくださいませ。鏡花のこと迎えに来て差し上げましたのよ」

「え、なんで?」

「昨日のことで動揺して学校をサボるんじゃないかと思いまして」

「うぐっ」


 このお姫様、おっとりしてるように見えてめちゃくちゃ鋭いんだよな……。


「そもそも鏡花が瓦割りをする時は何かに悩んでいる時でしょう」
「それは……」
「仕方ありませんわね。何しろなお……、」
「わーーーーー!!!!」


 慌てて八重の口を塞ぐ。
 すると、わらわらと若い衆たちが集まってきた。


「いかがしやした?」
「なんでもないっ!!八重が煎茶のおかわり欲しいって!!」
「承知しやした!」