俺がずっと欲しいものは、ずっと変わらない。
 鏡花ただ一人だった。


「なおちゃんってゆうの?わたし、よしのきょうか!いっしょにあそぼう!」


 鏡花と初めて会ったのは5歳、幼稚園に入った時だった。
 初めて会った時から笑顔がかわいくて、陽だまりみたいな彼女に惹かれた。

 敵対する家の子だとか思っていなかった俺たちは、八重も含めてよく三人で遊んだ。


「たんざくのおねがいかいたー?きょうかはね、『なんでもいちばんになる』!」
「わたくしは、『がいこくにいってみたい』ですわ」
「なおちゃんは?」
「ぼくはひみつ」
「えー!?なんでー?」
「なおさんだけずるいですわ」
「ないしょだよ」


 幼稚園の七夕で書いた短冊には「きょうかちゃんとけっこんする」と書いて飾った。「したい」じゃなくて「する」なのが、決意表明でもあった。

 でも、その短冊を見た両親に烈火の如く怒られた。


「桜花組の娘なんかと仲良くするな」
「染井一家の跡取りらしくあれ」


 幼かった俺は、どうしてダメなのか理解できなかった。


「二度とあの娘には近づくな」


 ただ鏡花が好きで、一緒にいたいだけだったのに。
 ダメと言われたら、どうしても欲しくなる。

 鏡花を諦めるつもりは毛頭なかった。
 諦めるくらいなら、変えてやろうと思った。

 鏡花と一緒にいるためなら、俺は――……


* * *


「……か、若っ!」