もう恋はしないって思ってた。

「な、なに言ってるの、白都くん?」


 ギギギギッと油の切れたロボットのように首だけ回して白都くんの方を見ると、すっと白都くんの手が近づいてきて、わたしの髪にそっと触れた。

 反射的にビクッと体を震わせるわたしを見て、くすりと笑う白都くん。


「僕はいつだって本気だよ? ヴァンパイアの美しさと、人間の儚さを兼ね備えたハーフヴァンパイアの女の子がこんなにも愛おしいものだなんて、君に出会うまで考えたこともなかった」


 動け、動け、わたしの体。

 ここにいちゃダメだ。


 恐怖で動けなくなった足を無理やり引きずるようにして、わたしは図書部屋を出た。


「ねえ、どうして逃げるの? この部屋、気に入ったんでしょ? ずーっといていいんだよ?」


 そんなわたしを、白都くんがゆったりとした足取りで追ってくる。


 まるで、「僕から逃げられるわけないのに」とでもいうかのように。


 玄関まで辿り着くと、カギを開け、ドアを力いっぱい押し開け……あれっ、開かない⁉

 何度かカギをガチャガチャ回してみたり、ドアノブをがたがたと動かしてみたり。

 けど、玄関ドアは一向に開く気配がない。


 焦りで手のひらがじっとりと汗ばむ。